あなたの夢はなんですか?
大浜夏樹の夢の一つ、それこそが【四国 88箇所を巡る旅】です。
ここは、大浜夏樹という一人の人間の抱く夢が叶った瞬間を記録したページです。

※こちらのページには1日目~15日目までの全記録を、時間軸に沿って載せております。
そのため、ページの内容はかなり長く、容量も大きく、見づらいかもしれません。
ただ、
四国88箇所の旅は、1番から88番に至るまで、切るに切れない旅だと感じましたので、
大きな流れとして、今、HPを見ていただいている貴方様も【15日間を一緒に旅する感覚】で、こちらのページをお楽しみいただけたらと思います。


1~4日目(現在のページ)
5日目~2009.4.14
6日目~2009.4.15
7日目~2009.4.16
8日目~2009.4.17

9日目~2009.4.18

10日目~2009.4.19

11日目~2009.4.20

12日目~2009.4.21

13日目~2009.4.22

14日目~2009.4.23

15日目~2009.4.24

帰り道




【【1日目~2009.4.10】】

この日、
徳島港着のフェリーの扉が開いた。

少し強すぎる春の日差しが射しこんでくる。

徳島県、吉野川。
吉野川の河川敷。

4月のまだピリッと冷たい風が
タンポポの黄色い花を揺らす。
目にまぶしい
黄色のハナ。
土手の新緑と
雲一つない青。

たった2色だけの世界。
エンドウの花。
■第1番霊場 霊山寺■

1番はお遍路のはじまりの寺だけあって、お遍路グッズがたくさんあった。
観光客のようなお遍路さんが大型バスで乗り付けて、物珍しそうにそのグッズを手にとって、店員さんに質問している。

もっと静かで、気の高い場所を想像していたので、多少面食らった。
霊山寺で入れたお賽銭。



この5円玉は
3年前に亡くなったお祖母ちゃんからもらったもの。



7年前、
成人式で実家に帰ってきてた僕は、真新しいスーツを着て、その晴れ姿をお祖母ちゃんに見せに行った。

うちのお祖母ちゃんはとにかく働き者で、90歳も近いというのに、畑仕事に出ていた。
(高齢で仕事するから、ずっこけて畑から3m下の川に落ち込んだり、みかん畑でマムシに噛まれたりするような、やんちゃなお祖母ちゃんだった。)

お祖母ちゃんはその日も畑の草抜きに出ていた。

「明日、成人式いってくるからね。」

真ん丸くなった背中を座ったままひょこっとのばして「よー似合うとるわー」と言ってくれた。

「お祝いあげたいけど、畑やからなんにもないわぁ…あ、さっきこんなん見つけたから夏樹にあげるわぁ」

土の香りのするごつごつの手には、同じく、土の匂いのする真黒な5円玉が握られていた。



なんの変哲もないただの5円玉だった。

汚れきった5円玉だった。

でも、僕は嬉しかった。



まだ小さいとき、内気な僕は、男の子だから、お兄ちゃんだから、とよくお祖母ちゃんに叱られた。

だから、僕はお祖母ちゃんのことが少し嫌いだった。

本当に嫌いじゃないんだけど、ちょっとひねた気持ちがあって、お祖母ちゃんの家に遊びにいくのが嫌だった。

僕は大きくなるにつれて、嫌いだったことを忘れていったけど、おばあちゃんのことも忘れていった。

やがて、親元を離れ、下宿するようになって、家族の大切さに気づきはじめる。

お祖母ちゃんのことも「どうして嫌いだ、とか思っていたんだろう。」と遠く会えなくなってから想う。



だから、僕は嬉しかった。

この5円玉は遠く離れていても近くに感じられるお祖母ちゃんと僕との絆だと思えた。



それから、お祖母ちゃんは亡くなってしまったけど、実家に帰るたびに欠かさず行くお墓参りで、お祖母ちゃんやお祖父ちゃん、伯父さんの事を想い手を合わせると、不思議とみんなが近くに感じられるようになった。



だからお祖母ちゃんの5円玉は大切な絆だけれども、もう必要がないものかもしれない。

お祖母ちゃんの5円玉は働き者だったお祖母ちゃんのように、これからもたくさんの人に幸せな御縁(5円)を運んでくれるだろうから、僕の手にあるより、納めてあげるほうが良いのだ。



僕はそっと、この5円玉を88箇所の第1霊場・霊山寺に納めた。



罰もへったくれもありゃしない。
ここにも黄色い花の群れ。
■第2番霊場 極楽寺■

霊山寺に比べると寺と人とが離れてあるような場所である。
極楽寺にある弘法大師御手植の「長命杉」は圧倒的な大きさにも関らず、ただ、静かで、近くに居るだけで「守られている」という感覚になる大樹だ。

桜の花びらが散っていた。
極楽寺で見つけた小さなハート。
■第3番霊場 金泉寺■

大型バスで乗り付けるツアーの引率者は、説明や説教などとても慣れて話す。
四国の人間よりも詳しいのではないだろうか。
■第4番霊場 大日時■

少し山に入った場所にある大日寺。

門前には人の手で植えられた美しい春の花々が咲いている。


このあたりでもう既に日焼けがじりじりと痛かった。
手水鉢の下にもかわいい小さな花が咲く。
色とりどりの植えられた花たち。
人の手によって作られた世界は良くも悪くも美しすぎて、僕には眩しく感じられる。
■第5番霊場 地蔵寺■

大日寺から山坂を下ると地蔵寺に着く。

大日寺からの歩き遍路のおばさんから、この旅初めての御接待を受ける。飴ちゃんをごっそり一掴み。照れくさいほどに嬉しい。
そして、「こんにちは」と言われるのも、心臓が高鳴るくらいに嬉しいと気づく。
僕も挨拶できるようにしよう。
地蔵寺には樹齢800年の大銀杏がある。
■第6番霊場 安楽寺■

お賽銭を入れるたびに、お祖母ちゃんの顔がふーっと自然と浮かんでくる。霊山寺でお祖母ちゃんの5円玉を入れたからだろうか。
■第7番霊場 十楽寺■

十楽寺の仁王門の前で二人のおじさんに写真撮影を頼まれた。
一人は大阪から同窓会で徳島にきたそうで、ここにはおじさんが小学生以来、実に、60年ぶりのお参りだそうだ。
昔話を嬉しそうに話すおじさんの目の輝きは、傾きかけた夕陽がうつっているだけではないようだった。
思い出はこうして再生していく。
夕暮れ時にだけシャッターを押させる花がある。
■第8番霊場 熊谷寺■

どうやら寺は17時で閉まるらしい。
すでに18時を過ぎた熊谷寺は誰も居ない。
神々しかった寺は恐々しくその感覚を変える。
名前も知らない美しい花。
僕の好きな花の一つ。
確かムグルマソウといったような…。
蕾。
夜がやってくる。
■第9番霊場 法輪寺■

夕陽で赤みがかった畑の中を抜け、法輪寺へ。
野宿初日、久々の野宿にどきどきを隠せない。
外で鳴くカラスの声が、昼間より憎らしく、挑戦的に聞こえる。


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【【2日目~2009.4.11】】

5時。
「今日」が命を燃やしはじめた。
2匹の猫と
2匹のカラスと
1匹の犬がいる。

犬はとことこと近寄ってきて、昨夜の孤独を哀れみ、慰めてくれるかのように、黙って連れ添ってくれる。
■第10番霊場 切幡寺■

切幡寺から目を上げると、新緑の山が、もう半分も色を変えていた。
蓮華草。
あの家は、たぶん、幼かったあの時に見たことがあると思った。
まっすぐな道があった。
分かれ道があった。
僕はより花のたくさん咲く道を選んだ。
七色のキャベツが朝日に輝く。
朝の光は、世界を美しさでコーティングする特別な力がある。
■第11番霊場 藤井寺■

名前の通りに藤の花が美しく咲くであろう、大きな藤棚のある寺。

12番までは車道で36キロ。
お遍路の初めての難所を迎える。
人間の造形物も自然の一部となりうる。
桜の花びらの天の川。
険しい山にも花が咲く。
まるで絵のような場所にまで登ってきた。
■第12番霊場 焼山寺■

11番を出て実に4時間30分。36キロ。
ただただ目の前の山を越えて、緑の中に入っていく。

「このカーブを抜けたら寺が見えるはず。」と、滝のような汗をかきながら…木々の冷たい吐息に体を震わせながら…何度も何度も期待をして、何十回を裏切られた先にある12番。

体力にはちょっとばかし自信のあった僕だけど、10mも進まないうちに足が止まってしまった。

そうまでして辿りついた12番なのに、感動はまったく感じない。
それは、12番はゴールではなくて、ただの12番目の通過点でしかないから、と知っているからだ。


神山町のバス停で一休みしていると、おばあちゃんが話しかけてくれて「みかんあげるわ。」とナイロン袋からとりだした2つの文旦をくれた。
僕はバス停のベンチに横になり、2つの文旦を頭の傍に置いて、その甘い香りをかぎながら10分だけ昼寝をした。

春の風がなんとも心地良い。
雫が水面を弾くように生える苔。
■第13番霊場 大日寺■

12番までは上り坂。
13までは下り坂。でも、向かい風。
そうそう楽はさせてもらえない。

山から町に場所を変え、次の寺を目指す。
手の中におわします。
■第14番霊場 常楽寺■

12番の疲れがどっと出て、手を合わしても自分の息遣いしか感じない。

この寺には仁王門がない。
■第15番霊場 国分寺■

寺と寺が近い。

手を合わせてもご飯のことだけしか考えられない。

それを乗り越えて…が、信仰というやつか。
■第16番霊場 観音寺■

煩悩や欲を素直に表現できるほうが、人間らしいと思う。
2日経って辛かったのがサドルに乗りっぱなしのお尻。

そこでクッションを敷こうと考えて、徳島市内の「ふとん たけうち」さんに入って、自転車に合うクッションがないか尋ねた。
生憎(やっぱり)合うようなクッションがなかったのだが、なんと、少し時間をくれたら専用クッションを作ってくれるというのだ!

それだけじゃなくて、泊まる所も(善根宿 栄タクシー)教えてくれて、むちゃくちゃお世話になりました!
■第17番霊場 井戸寺■

栄タクシーでシャワーも寝る場所も無償で借りられるとのことで安心した勢いで井戸寺へ。

善根宿の存在をはじめて知る。


※善根宿とは、一般の方がお遍路さんの為に基本的に無償で提供してくれている宿のことを言う。
栄タクシーで一緒になった京都からのお遍路さんと、オーストラリア人のお遍路さん。

一緒にお好み焼きを食べにいったり、栄タクシーの社長の話を聞いたり。

初めてお遍路さんと近づいた夜でした。


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【【3日目~2009.4.12】】

■第18番霊場 恩山寺■

12番の疲れがずっしりとのしかかる。
それでも栄タクシーでシャワーを浴び、畳の上で寝られたおかげで、気持ちは前向きになった。
■第19番霊場 立江寺■

手を合わせる。
願うことから感謝することに変わっていることに気がつく。
先のことよりも、今在ることが嬉しい。
そんな気持ちになっている。

ここでお遍路の白衣と袈裟を買った。
「自分は自分のスタイルで」という気持ちを捨てて、お遍路として、同じように88箇所を巡るお遍路さんと心を共にしようと思った。
そうしたら、色々な人から話しかけられるようになった。
自分が柔らかくなると、周りの人間との距離が目に見えて縮まるのが分かる。
■第20番霊場 鶴林寺■

昨日の12番に続いて難所が続く。

体をいじめ、
心をいじめ、
疲れ果てたら、
意地を忘れてしまうのかも。
■第21番霊場 太龍寺■

21番まではロープウェイがあったのだけれど、敢えて山道をいく。


山の上にあるお寺への道をいくと、寺が近いと分かる合図がある。
それは「風」。
寺が近くなると、サラサラサラっと木の枝の葉が擦れ合いはじめる。


往き道の途中で車の人が「お兄さん僕の代わりにがんばって。」と500円くれた。
珍しい花が咲いていた。
■第22番霊場 平等寺■

21番の山から下ってきて人里へ。

ここ平等寺は畑の近くに見晴らしよくある寺だ。
夕暮れ時の涼しい風が、見晴らしのいい寺の中を吹き抜けて、とても心地が良い。
地元の小さな子供達の声がする。

地元に愛される寺だと思えた。
愛の形。
汚されたロマンティック。
■第23番霊場 薬王寺■

徳島最後のお寺。

着いたのは日が暮れた頃。

この後、バスを改良した善根宿に泊まることになる。


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【【4日目~2009.4.13】】

薬王寺から少し戻ったところにある善根宿。外から見るとこんな感じ。
善根宿の中。
いっしょになったお遍路仲間。
この三人にネズミ一匹を加えて、一夜を共にしました。
国道55号をひたすら南下。
高知県に入ると海の真横をただひたすら走った。
コンビニでお弁当食べる前の犬ちゃん。
コンビニでお弁当食べた後の犬ちゃん。
影ができて気持ちよさそうに寝てた。
室戸岬前の夫婦岩。
高知県の室戸岬に立つ空海。
でかいし、白い。
その空海が修行して悟りを開いたとされる洞窟・御厨人窟(みくろど)。

こちらは居住スペース。

中に入ると天井の岩から滲みだした雫がポタポタと落ちている。
空気はひんやりと冷たく、供えられたお香が充満し、洞窟自体の岩の臭いと混ざって、不思議な空間となっている。

洞窟の奥から入り口のほうへ振り向けば、明るい世界に太平洋と空が見える。
波の音が静かながら、洞窟内に幾重にもかさなりこだまする。


この不思議な洞窟の内部には特別な力があってシャッターを押すことができなかった。


自分の肌で感じて欲しい場所。
こちらは修行スペース。

同じような穴が二つ。
自然にできたとは思えないほど、うり二つの洞窟。
■第24番霊場 最御崎寺■

室戸岬にあるお寺。
大きな大きな太平洋が見渡せるのに、海の匂いはしない。


寺のある小高い山を下るとき、華奢な金髪の外国人のお遍路さんを追い抜いた。
下り口で再び会った時、「ガンバッテクダサイ。」と言われた。
本来は僕が声をかけてあげるべきなのに…。
恥ずかしくて仕方ない。
空と海しかない。
■第25番霊場 津照寺■

この時点で朝から約100キロを走行。
本堂までの階段をあがると足が震える。太陽の日差しは強く、眠気を誘う。
■第26番霊場 金剛頂寺■

熱くても、苦しくても、この足で進むのは、自分と同じように先を目指すお遍路さんの姿を見られるからだと気づく。
願掛けの旅ではない僕だけれど、次の寺を目指す、という単純な理由が力の源になる。


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